ワキガは医学的には「腋臭症」と呼ばれ、アポクリン汗腺の多く分布しているワキから臭いを発する状態をいいます。日本人などアジア地域は、欧米人に比べてワキガ体質の方は比較的少ないとは言われていますが、ワキガは特有な臭いがある為、その独特な臭いに悩んでいる方は少なくありません。
発症時期は主に思春期(成長期)から強くなるケースが多く、近年は食生活の変化や体格の変化から臭いの発症する時期が比較的早くなっているようです。当院でも小学生低学年のお子様の相談が増加傾向にあります。
これまでのワキガ治療は、手術がメインで行われてきましたが、最近はメスを使用しない高周波治療や注射での治療法もあるため、ご自身の臭いの程度や生活状況によって治療が選択できるようになりました。クリニックや医師の考え方によって治療法が異なりますので、まずは治療内容をしっかりと理解し、どの治療をするのか総合的に判断することが大切です。
ワキガの主な原因
ワキガの主な原因は、アポクリン汗腺やエクリン汗腺といった汗を分泌する汗腺です。それぞれの汗腺から出る汗の性質には特徴があり、ベタベタと粘り気のある汗もあれば、サラサラとした汗もあります。ワキガの発生に大きく影響をする汗腺は「アポクリン汗腺」と言われており、脇の下や陰部(デリケートゾーン)、乳輪周囲、耳の中に多く分布しています。
また、ワキガは遺伝的要素も深く影響していると言われており、ご親族やご両親のどちらかにワキガ体質の方がいらっしゃる場合は、影響を受ける確率が高いと言えます。(ワキガの遺伝子はABCC11により決定)
日本人のワキガ
日本人(アジア人)でワキガに悩んでいる方は全体の15%くらいと言われています。欧米人は全体の70%と言われている為、日本人のワキガ体質の方は欧米と比べると比較的少ないようです。日本人が欧米人に比べてワキガ体質の方が少ない理由として、食生活が影響していると言われており、魚や野菜を主食にしている日本人と肉食中心の欧米人ではアポクリン汗腺の発達にも違いがあるようです。
女性のワキガについて
アポクリン汗腺は性ホルモンの影響で活発になる為、ワキガ体質を持っていても思春期まで臭いがしない方がほとんどです。女性の場合は、生理や妊娠また出産のなどホルモンが大きく変化するため、一時的に臭いが強く出ることがあります。逆に女性ホルモンの分泌量が減っていく更年期以降は、ワキガの臭いが軽減するようです。
ワキガの症状
独特な臭い
ワキガの主な症状は、なんと言ってもその独特なニオイにあります。
ワキガ特有に臭いは「玉ねぎが腐ったような臭い」「洗っていない雑巾の臭い」などと例えられ、いずれにしても多くの方が不快に感じる臭いがあります。しかし、臭いの程度もかなり個人差があり、常に体から発せられたニオイに自身が慣れてしまい、ワキガ臭に気づかない人も多いようです。
ワキガ治療は、本人の臭いの自覚によって治療の必要性を判断する事も大切です。他人から明らかに臭いがあると思われていても、本人がニオイを自覚していなければ意味がありません。
耳垢が湿っている
耳垢の状態は、ワキガ体質であるかの判断基準に大きく影響します。カサカサした耳垢ではなく、常に耳垢が湿っている状態の「ジク耳」「湿性耳垢」の場合は、ワキガ体質である可能性が高いと考えられています。
ワキ毛の濃さや色素沈着
ワキガ体質の方の皮膚を診察すると、比較的に脇毛の毛量多い方や皮膚色素沈着が強い傾向にあるようです。アポクリン汗腺は皮膚の比較的深い所の毛穴に存在しています。(皮表に直接開口しておらず、毛包の脂腺開口部の上方に開口しています。)そのため、ワキ毛が多い方は、アポクリン汗腺の数が多いと言えます。
アポクリン汗腺は「マンマリーライン」と言われる乳腺の並びに沿って存在します。(ワキの下・乳輪周り・陰部)
黄色い汗シミができる
アポクリン汗腺から出る汗は、乳白色でベタベタした粘り気のある汗が出ます。汗そのものには臭いはほとんどないのですが、汗の約70%の水分の他に、アンモニアや糖質やたんぱく質、脂質といった成分を含んでいます。
汗をかくことで不快な臭いや黄色い汗しみができる原因は、アポクリン汗腺から分泌されたこれらの成分を餌にする細菌が繁殖し、成分分解することで細菌臭を発生してニオイが出ます。また、汗に含まれるリポフスチンといわれる色素は色に影響します。リポフスチン色素は人種によっても違うのですが、私たち日本人のリポフスチン色素は薄い黄色または茶褐色ですので、「黄ばみ」ができてしまいます。
セルフチェックとケア
セルフチェック
- 家族にワキガ体質もしくはワキガの人がいる
- 比較的毛深く、皮膚の色素も黒い方である
- 耳垢が湿っており、じくじくしている
- 肉類や乳製品を好んで食べる
- ワキや乳輪部分、デリケートなどに黄色く色が付く
- 靴の中や靴下が臭う
- 他人から臭いを指摘されたことがある
- ワキの下や陰部に多く汗をかく
- ストレスを抱えこみやすい
- 下着が湿っている事が多い
日常で出来る臭いのケア・ワキガ予防
- 体を毎日清潔に保つ
- 制汗剤や制汗スプレーの使用
- 化学繊維の衣類を避け、綿素材の衣類を選ぶ
- 長年使用した衣類の買い替え
- 下着をこまめに取り換える
- 汗取りパットの使用
- 汗をかいたらすぐにシャワーや入浴をする
- 脇毛の処理を行う
- 刺激物の摂取を控える
- 動物性のたんぱく質やチーズなど控える
- ストレスをためない
- 精神的安定を保つ